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技術資料
2017/02/28

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [データ保護](3/11)

メディア

オブジェクトストレージ技術を検討し、適切な技術の選択のために知っておくべきポイントを紹介します。この記事は、Architecting IT社のChris M Evans氏が独自に作成した記事を、データダイレクト・ネットワークスがPDFとして提供したものの日本語訳の一部です。原文タイトルにある「オブジェクト・ストア」には日本での一般的な表現として「オブジェクトストレージ」を当てています。

機能2:データ保護

データ保護の概念は、オブジェクトストレージのさまざまな側面に及びます。従来型の「プライマリ」ストレージと比較して、オブジェクトストレージはより長期的なデータ保持に使われることが予想されるので、データの永続性が重要な要素となります。永続性とは、ハードウェアによる読み込み失敗やデータ破損を含むさまざまなエラーによって、保存するデータに論理的な破損が起こらないよう保証することへのニーズ、と考えることができます。

最近のハードドライブは、四半世紀前に使われていたデバイスと比較すると、はるかに信頼性が向上しています。それでも、ドライブには、読み込みエラーやその他の一時的な問題が発生します。オブジェクトストレージでは、データ・スクラビング、CRCチェック(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)、破損データや不整合データのリビルドなどを含む、さまざまなオン・ディスク管理機能を実行する必要があります。これらのバックグラウンド・タスクは、データの長期的保持が極めて重要な場合に、その健全性を保つためのプロセスを実行します。

考慮すべきもう1つの領域は、ハードウェア故障に対する保護です。最新のストレージアレイのほとんどは、ハードウェア故障によって失われたデータを回復するための方法として、RAID(Redundant Array of Inexpensive Disks:安価な複数のディスクにより冗長化されたディスクアレイ)を実装しています。データ・ボリュームが増大するとともに、RAIDには拡張性に関する問題が生じます。ストレージベンダーは、大容量ハードディスクを構成する複数ドライブの故障からデータを保護するために、デュアル・パリティや、場合によってはトリプル・パリティを実装していますが、ドライブのリビルド時間が長くなるので、オブジェクトストレージのようにデータ量が膨大な場合、RAIDは実用的ではありません。

代替策は、イレイジャーコーディング(消失符号訂正技術)を使ってデータを保護することです。イレイジャーコーディングは、データを複数の冗長符号に分割して変換するプロセスを記述するもので、オリジナルの情報を回復するには、必要最小限の冗長符号を揃える必要があります。たとえば、あるエンコーディング方式ではデータを12個の符号に変換し、オリジナルのデータをリビルドするには、そのうちの任意の8個が必要です。これら12個の符号は、高い回復機能を実現するために複数のドライブ、サーバー/ノードに分散させることができ、場合によっては地理的に異なる場所に分散させることも可能です。この12/8方式では、データを3箇所に分散させれば、そのうちの1箇所のデータが失われてもデータを回復することができます。

オブジェクトストレージには、顧客の要求に基づき、さまざまな保護値のイレイジャーコーディング機能を持たせる必要があります。イレイジャーコーディングにはかなりの処理オーバーヘッドが生じるので、より小さいオブジェクトの保護にもRAIDを使用することができ、アクセス性能が向上します。データを地理的に異なる位置に分散させた場合は、ネットワークに与えるリビルドの影響が重要になります。したがって、イレイジャーコーディングの特定実装(およびWANを介してデータを読み出す必要性)は、回復時間と顧客のSLA(Service Level Objectives:サービス・レベル目標)に直接影響します。この問題は、ローカルLANのレイテンシが大きい場合にも生じます。つまり、分散ネットワーク・ベースで回復を行う場合は、常にネットワーク性能の影響を受けます。未保護のデータは、データ喪失の可能性を無くすために迅速に保護し直す必要があるので、リカバリは迅速に行うことが重要です。


【オブジェクトストレージ選択の9つのポイント 目次】

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [はじめに](1/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [拡張性](2/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [データ保護](3/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [検索、インデックス機能、メタデータ](4/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [性能](5/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [セキュリティ](6/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [コンプライアンスと監査](7/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [導入モデル](8/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [プロトコルのサポートと業界標準](9/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [総所有コスト(TCO)](10/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [まとめ(結論)](11/11)

 

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出典:"Nine Critical Features for Object Stores" by Chris M Evans 
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