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技術資料
2017/02/28

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [はじめに](1/11)

メディア

オブジェクトストレージ技術を検討し、適切な技術の選択のために知っておくべきポイントを紹介します。この記事は、Architecting IT社のChris M Evans氏が独自に作成した記事を、データダイレクト・ネットワークスがPDFとして提供したものの日本語訳の一部です。原文タイトルにある「オブジェクト・ストア」には日本での一般的な表現として「オブジェクトストレージ」を当てています。

はじめに - オブジェクトストレージとは

オブジェクトストレージは比較的新しい市場分野ですが、着実に成長を続けており、さまざまな理由から、採用される例が増え始めています。念のために説明しておくと、オブジェクトストレージは大量の非構造化データを保存するために使われます。ここで、各「オブジェクト」は、基本的に特別なフォーマットを持たないファイルです(バイナリ・ファイルとも呼ばれる)。オブジェクトストレージには、人間が解読可能な小さいオブジェクトから、メディア(オーディオおよびビデオ)や各業界固有のフォーマット(石油およびガス、医療用の画像など)まで、あらゆるタイプのデータを保存することができます。

従来型のストレージに代えてオブジェクトストレージを使用することの利点はさまざまです。ブロック・ベースのシステム(たとえばファイバーチャネルやiSCSI)はスケールアウトが容易ではなく、保存データを本当の意味では理解していません。これらのシステムは、小さいレイテンシと細かいデータ粒度で内容を提供する「インテリジェント機能を持たない」ブロック・デバイスです。ファイルシステムはある種の構造をデータに設定し、ファイル・オブジェクトを階層構造(フォルダ/ディレクトリ)内に置いて、それらのオブジェクトにメタデータを付与します。しかし、メタデータは通常、ファイルの保存に必要な情報(作成時間、更新時間、アクセス規則)だけに基づいています。

オブジェクトストレージはこれより一歩進んだもので、フォルダ階層を無くします。オブジェクトは、一般に検索性の高い拡張可能メタデータとともに保存されます。スケールについて言えば、オブジェクトストレージは(数百ペタバイトとはいかないまでも)数ペタバイトのサイズに拡大することが可能で、通常、データの配置に関する制約はありません。このプラットフォームは従来形態のストレージより多くの利点を備えているので、企業で広く採用されるようになっています。ブロック・ベースのストレージアレイはスケールアウトが容易ではなく、多数のHDDやSSDのデータ保護(RAIDなど)にも問題があります。ファイル・ベースのシステムには、ファイルシステム自体のスケーラビリティによる制約があります。この制約は、オブジェクト数、同時アクセスまたは並列アクセス、ファイルシステム構造の整合性をチェックするための回復時間のいずれかに関するものです。オブジェクトストレージは、よりシンプルでスケーラブルなソリューションを代表するものであり、標準的なウェブ・ベースのプロトコルを介して簡単にアクセスすることができます。

恐らく、オブジェクトストレージの採用を考えているIT組織にとって最大の課題は、プラットフォームの使用方法の選択と、ベンダー提供製品の評価方法の選択でしょう。オブジェクトストレージはウェブ・ベースのプロトコルを使用するので、ある程度のコードを作成する必要がありますが、後に述べるように、これは常に変化します。

機能的な観点からすると、オブジェクトストレージには、ある目的に関して1つのプラットフォームが他のプラットフォームより適しているという判断の基準となる側面が、数多くあります。この記事の残りの部分では、IT組織がオブジェクトストレージ・プラットフォームに求めると思われる要素を明らかにし、それを分類して詳しく分析していきます。


【オブジェクトストレージ選択の9つのポイント 目次】

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [はじめに](1/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [拡張性](2/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [データ保護](3/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [検索、インデックス機能、メタデータ](4/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [性能](5/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [セキュリティ](6/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [コンプライアンスと監査](7/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [導入モデル](8/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [プロトコルのサポートと業界標準](9/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [総所有コスト(TCO)](10/11)

オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [まとめ(結論)](11/11)

著者について

Chris M Evansは、1987年以来技術業界の業務に従事しています。IBMのメインフレーム・プラットフォームのシステム・プログラマとしてそのキャリアをスタートしましたが、その間ずっとストレージに興味を持ち続けてきました。国外勤務を経て1990年代後半にインターネット・ベースの音楽配信会社を協同設立し、21世紀に入ってからコンサルタント業務に復帰しました。2009年には、効率的な技術の展開を通じた企業利益の提供に特化した投資コンサルタント会社、Langton Blue Ltd(www.langtonblue.com)を協同設立しました。現在は人気のブログ(http://blog.architecting.it)を運営しながら、多くの会議や招待者限定イベントに参加しているほか、Twitter(@chrismevans)その他のSNSを通じて定期的に技術記事を発表しています。

電子メール:mailroom@architecting.it
Twitter:@architectingit

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出典:"Nine Critical Features for Object Stores" by Chris M Evans 
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