オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [まとめ(結論)](11/11)
オブジェクトストレージ技術を検討し、適切な技術の選択のために知っておくべきポイントを紹介します。この記事は、Architecting IT社のChris M Evans氏が独自に作成した記事を、データダイレクト・ネットワークスがPDFとして提供したものの日本語訳の一部です。原文タイトルにある「オブジェクト・ストア」には日本での一般的な表現として「オブジェクトストレージ」を当てています。
オブジェクトストレージとは
オブジェクトストレージは大量の非構造化データを保存するために使われます。各「オブジェクト」は、基本的に特別なフォーマットを持たないファイルです。オブジェクトストレージには、人間が解読可能な小さいオブジェクトから、メディア(オーディオおよびビデオ)や各業界固有のフォーマット(石油およびガス、医療用の画像など)まで、あらゆるタイプのデータを保存することができます。
オブジェクトストレージはフォルダ階層を無くし、一般に検索性の高い拡張可能メタデータとともに保存されます。スケールについて言えば、オブジェクトストレージは数ペタバイトのサイズに拡大することが可能で、通常、データの配置に関する制約はありません。このプラットフォームは従来形態のストレージより多くの利点を備えているので、企業で広く採用されるようになっています。
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機能1:拡張性
オブジェクトストレージは、スケールアウトNASのような従来型のデータストレージより高い拡張性を実現できるように設計されています。
しかし、高いスケーラビリティを実現するにあたっては、単純にオブジェクト数やデータ容量を増やせばいいというものではありません。以下のような点を考える必要があります。
・オブジェクトのサイズ
・容量の制限
・階層化とキャッシング
・メタデータの管理
・オブジェクト・アクセス
機能2:データ保護
オブジェクトストレージはより長期的なデータ保持に使われることが予想されるので、データの永続性が重要な要素となります。
オブジェクトストレージでは、データ・スクラビング、CRCチェック(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)、破損データや不整合データのリビルドなどを含む、さまざまなオン・ディスク管理機能を実行する必要があります。また、ハードウェア故障に対する保護も検討しなくてはなりません。拡張性に限界があるRAIDの代替策として、イレイジャーコーディングを使ってデータを保護します。
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機能3:検索、インデックス機能、メタデータ
オブジェクトストレージは、データをわずかに論理的あるいは物理的に分離した状態で、バケツやプールのような1つのフラットな階層内に保持します。
通常、オブジェクトストレージは、2つある方法のどちらかを使ってデータを保存します。すなわち、エンドユーザーが(標準ファイル名に似た)オブジェクト名を設定する方法か、システムが生成したオブジェクトID(OID)を使ってオブジェクトの保存とアクセスを行う方法です。OIDを使用する時はメタデータが非常に重要です。
メタデータ検索の性能は、オブジェクトストレージ自体の中に保存されているデータ量とは無関係でなければなりません。これは、スケーラビリティの管理に関する極めて重要な要求事項です。
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機能4:性能
オブジェクト・プラットフォームをコンテンツデリバリネットワーク(CDN)のバッキングストレージとして、またはその他のSaaS(Software as a Service)ソリューションとして使う場合は、並列処理能力へのニーズが特に重要です。並列処理能力とは、多数のオブジェクトを同時にストリームできることと、1秒あたりに多数の個別要求を処理できることの両方を意味します。その代表的な測定単位は、IOPS(I/Os per Second:I/O/秒)とスループット(MB/秒またはGB/秒)が基本になっています。
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機能5:セキュリティ
オブジェクトストレージ内に保持されるデータのボリュームについては、「マルチテナント機能」が非常に重要です。ビジネスユーザー(ある組織内の異なる部門、あるいはまったく異なる組織)は、そのデータを他者によるアクセスから遮断できる機能を求めます。これは、顧客あるいは顧客内のオブジェクトごとに個別のセキュリティ認証情報を持たせ、暗号鍵を提供することを意味します。
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機能6:コンプライアンスと監査
通常、法令上の要求を満たすシステムは、データの不変性の確保やオブジェクトのバージョン管理(変更を追跡できるようにするため)能力に加えて、やはりデータの不変性を実現するためのオブジェクト・ロック機能やWORM(Write Once Read Many:書き込みは一回限りだが読み取りは何度でもできる)機能の実装などが可能でなければなりません。
また監査機能はコンプライアンス機能を補完して、データがどのようにオブジェクトストレージ・システム内に保存されたかを示す証跡を提供します。
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機能7:導入モデル
ソフトウェアのみによるオブジェクトストレージ導入が数多く見られるようになっています。最大限の柔軟性を実現するために、ベンダーは3つの選択肢を提案するでしょう。
- ソフトウェアのみ – VSA(仮想ストレージ・アプライアンス)として導入するか、ハードウェア上に実装されて導入。
- アプライアンス – ホワイト・ボックスとして構築するか、主要ハードウェア・プロバイダとの協力の下に構築した、専用ハードウェア・アプライアンス。
- クラウド – パブリック・クラウド内にインスタンスとして導入。
どのオプションでも顧客は完全な相互運用性を期待でき、また、同じ管理インターフェースを使用することができます。
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機能8:プロトコルのサポートと業界標準
HTTPの使用は、ネットワークのどこからでも(LANとWANの別を問わず)データにアクセスできるという点では柔軟ですが、スケールアウト・ファイルシステム内に保存されたデータへアクセスする場合と異なり、オブジェクトストレージを使うようにアプリケーションをコーディングする必要があります。結果として、各ベンダーが製品にNFSおよびSMBのサポートを追加するようになり、標準的なファイル・ベースのプロトコルを通じてデータの保存と呼び出しを行うことができるようになりました。スケールアウト機能を完全にサポートするには、サポートに並列ファイルシステムを含める必要があります。
拡張プロトコルをサポートするということは、既存のアプリケーションを簡単に移植または変更して、そのデータにオブジェクトストレージを使用できることを意味します。また、スケールアウト・ファイルストレージに対し、ファイルストレージをエミュレートするオブジェクトストレージを使用することによるアーキテクチャの違いも検討に値します。
プロトコルのサポートも、デファクト・スタンダードや業界標準を採用するように拡張する必要があります。オブジェクトストレージの場合、これは、広く使われるようになった2つの「標準」であるS3とSwiftを使用できることを意味します。
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機能9:総所有コスト(TCO)
最も明確なライセンシング・モデルは、容量に基づくものです。これは、実効容量あるいは物理容量をプラットフォームに追加し、実際の容量増加分に対して追加ライセンス料を支払う方法です。
また、機能ごとに課金するというオプションもあります。これは、一部のベンダーにとって、すべての機能オプションを含む包括的な課金構造を作り出す機会にもなります。エンドユーザーの視点からすると、より魅力的であることは確かですが、隠れた追加コストが問題となる可能性があります。
今のところ、オブジェクトストレージの効率を比較するための現実的なベンチマークはありません。これは、業界が何らかの発展を実現すべき領域の1つとして残されています。
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結論
以上、オブジェクトストレージに関する9つの重要な機能について述べてきました。ベンダーは、その製品アーキテクチャを補完するという方法によって、これらの機能を実現します。皆さんのビジネスにどのようなプラットフォームが適しているのかを決定する際には、これらの重要点のいくつかが他の点より優先されるでしょう。ここで挙げたリストは特別な順番に従ったものではありませんが、導入を予定している場合は、このリストの内容すべてを検討して、さらに詳しい検討を必要とするような、より重要な機能を見極める必要があります。
【オブジェクトストレージ選択の9つのポイント 目次】
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [はじめに](1/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [拡張性](2/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [データ保護](3/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [検索、インデックス機能、メタデータ](4/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [性能](5/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [セキュリティ](6/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [コンプライアンスと監査](7/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [導入モデル](8/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [プロトコルのサポートと業界標準](9/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [総所有コスト(TCO)](10/11)
オブジェクトストレージ選択の9つのポイント [まとめ(結論)](11/11)
著者について
Chris M Evansは、1987年以来技術業界の業務に従事しています。IBMのメインフレーム・プラットフォームのシステム・プログラマとしてそのキャリアをスタートしましたが、その間ずっとストレージに興味を持ち続けてきました。国外勤務を経て1990年代後半にインターネット・ベースの音楽配信会社を協同設立し、21世紀に入ってからコンサルタント業務に復帰しました。2009年には、効率的な技術の展開を通じた企業利益の提供に特化した投資コンサルタント会社、Langton Blue Ltd(www.langtonblue.com)を協同設立しました。現在は人気のブログ(http://blog.architecting.it)を運営しながら、多くの会議や招待者限定イベントに参加しているほか、Twitter(@chrismevans)その他のSNSを通じて定期的に技術記事を発表しています。
電子メール:mailroom@architecting.it
Twitter:@architectingit
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出典:"Nine Critical Features for Object Stores" by Chris M Evans
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